感染症の適切な治療に貢献する「アイギアプロ」という機械を導入しました。
この機械は、炎症反応である「CRP」を痛みをほとんど伴うことなく測定することができます。
炎症反応「CRP」とは
CRPとは、感染症の評価で広く用いられているマーカーの一つです。
発熱の原因が「ふつうのかぜ(ウイルス性の病気)」なのか、「重症感染症(細菌性の肺炎や腎盂腎炎など)」なのかをざっくりと判定することができます。
重症感染症の場合、抗菌薬投与や入院治療が考慮されます。
専門的な話CRPの価値は医師や施設によって様々ですが、少なくても「CRPを測定することで、不要な抗菌薬処方が減る」ことがコクランレビューで示されており、当院は抗菌薬の使用にあたってCRPを参考にしています。カットオフ値については、たとえば3歳未満の深部重症細菌感染症の診断において、CRP7.0mg/dL以上は感度79%、特異度91%で、5.0mg/dL未満は尤度比0.087、検査後確率1.9%で有用だったと報告されています。また、CRP4.0mg/dL以上をカットオフとしたとき、重症細菌感染症の感度74%、特異度76%という報告もあります。いっぽうで、入院時CRP値が3.0mg/dL以下で、基礎疾患なく全身状態良好であれば、抗菌薬は待ってもよいという論文もあります。これらをふまえ、当院ではCRP4mg/dL未満をウイルス感染(ふつうのかぜを含める)、4mg/dL以上を細菌感染(肺炎や腎盂腎炎)の目安としています。もちろん、診察上の重症度評価も併せて総合的な判断となります。
検査するタイミング
CRPは「ふつうのかぜではないかもしれない」と疑われたときに検査します。
「ふつうのかぜではないかもしれない」と疑うタイミングは次のいずれかです。
- 発熱4日以上続く
- 診察で重症な所見がある
- 胸部X線で肺炎像がある
小児科の診療所でよく経験するのは「発熱4日以上続く」ときです。
ふつうのかぜであれば2-3日で解熱することが多いため、発熱4日以上というのは「「ふつうのかぜではないかもしれない」と疑います。
こういうとき、CRPは「ふつうのかぜ」なのか、「重症感染症」を評価する手助けになります。
「アイギアプロ」はほとんど痛くない
発熱4日以上あると、当院では基本的に血液検査をしています。
検査は習熟した医師・看護師が行いますが、それでも痛い検査です。
子どもにとって、血液検査はかなり侵襲的な検査となります。
今回導入した「アイギアプロ」は微量血液で検査することができます。
1滴にも満たない血液の採取ですから、ほとんど痛くない処置です。
0歳児の赤ちゃんも含めて、多くの子どもが泣かずに検査を終えられます。
「アイギアプロ」は子どもの苦痛を減らしつつ、適切な感染症治療に大いに貢献してくれます。