「アレルギー検査(血液)」の精度は低い

何か食物アレルギーがあったら嫌なので、血液検査をしてください。

食物アレルギーが心配なのですね。ですが、血液検査をしても食物アレルギーかどうかは分かりません。
これは、当院のアレルギー外来でよくある光景です。
食物アレルギーの心配があって、「アレルギー検査」を受けたいと考えておられる人はいらっしゃると思います。
しかし、「アレルギー検査」と呼ばれている血液検査の精度はそれほど高くありません。
食物アレルギーの診療の手引き2023【血中抗原特異的IgE抗体検査】
抗原特異的IgE抗体陽性(=感作されていることを示す)と食物アレルギー症状が出現することとは必ずしも一致しないことを念頭におくべきである。
血液検査の精度は高くないため、その結果の解釈には注意が必要です。
血液検査が陽性であっても、「食物アレルギーではない」ということはよくあります。

でも、アレルギー検査の数値が高ければ「強いアレルギー」で、低ければ「弱いアレルギー」ってことですよね?

いいえ、検査の数値はあくまで感作を示しているだけです。数値だけでアレルギーが強いか、弱いかを判断できません。
皆さんが「アレルギー検査」と呼んでいる血液検査では、アレルギーの強さも分かりません。
血液検査だけでは、アレルギーがあるのかないのかも判断できず、その強さも分からないのです。
まず「アレルギー検査は精度が低い」ということを覚えましょう。

アレルギー検査の精度が低いことは分かりました。でも精度が低くても、ときどき当たるということですよね?

はい、ときどき当たります。しかし、食物アレルギーかどうか診断することはとても大事なことです。そんな大事な診断を「ときどき当たる検査」で決めるのは良くないと思います。
大事な診断を、精度の低い血液検査だけで診断することは危険です。
間違った診断がなされる危険性があるからです。
食物アレルギーの診断には、もっと正確で精度の高い検査があります。
それが「食物経口負荷試験」です。
「食物経口負荷試験」の精度は高い
食物アレルギーの診療の手引き2023食物経口負荷試験はアレルギーが確定しているか疑われる食品を単回または複数回に分割して摂取させ、症状の有無を確認する検査である。
要するに「食物経口負荷試験」とは、実際に食物を食べてみて、「症状が出ればアレルギー、出なければアレルギーではない」と判定する検査です。
原理自体はとてもシンプルです。
食物アレルギーの診断において、「食物経口負荷試験」はもっとも重要な検査だと言えます。
「食物経口負荷試験」を実施すると、次のことが分かります。
- 食物アレルギーがあるかどうか
- 食物アレルギーがある場合、どの量まで食べられるかどうか
- 食物アレルギーが治ったかどうか
これらは、皆さんが「アレルギー検査」と呼んでいる血液検査では、通常分からないことです。
「食物経口負荷試験」をすることで確実な判断ができます。
「食物経口負荷試験」の精度は高く、アレルギーの診断および治療に「食物経口負荷試験」は不可欠です。
診断は「食物経口負荷試験」ができる施設で
食物アレルギーを「食物経口負荷試験」ができない施設で診断し、経過観察していくと、次の不安があります。
- 本当に食物アレルギーはあるのか
- 食物アレルギーがある場合、どの量までなら食べられるのか
- 食物アレルギーが治ったかどうかの判断はどうするのか
特に2の要素は大切だと考えています。
というのは、少し食べられる場合は、その少し食べるを家庭で続けていると、食物アレルギーが治りやすくなるためです。
逆に安易に除去していくと、食物アレルギーはより強固となる危険性があります。
食物アレルギーの診断は「食物経口負荷試験」ができる施設で行ってください。
「食物経口負荷試験」をもう少し詳しく知りたい人は、こちらも参照ください。