ダニやスギによるアレルギー性鼻炎に対し、当院で「舌下免疫療法(ミティキュア・シダキュア)」を受けておられる患者さまは多くいらっしゃいます。
舌下免疫療法中に「歯科処置」を受けることがあると思います。
あるいは、舌下免疫療法中に「成長によって歯が自然脱落する」こともあると思います。
このとき、舌下免疫療法を続けてよいのか迷うかもしれません。
ここでは、舌下免疫療法中に「歯科処置を受けた・歯が抜けた」場合の当院の指針を示します。
論文検討
- 2025年6月時点で、PubMedで検索する限り、舌下免疫療法によるアナフィラキシー症例報告は存在しましたが、具体的に抜歯後に起きたという報告は見つかりませんでした。
-
「歯科処置を受けた・歯が抜けた」ことで歯肉や口腔粘膜からの薬剤吸収が高まり、アナフィラキシーのリスクを高める可能性があるとされています。しかし、これは理論的なリスクを示唆しているだけで、具体的な症例報告はありません。
-
Local Side Effects of Sublingual and Oral Immunotherapyでも、舌下免疫療法のアナフィラキシーは非常にまれ(1億回の投与に1回程度)と報告されていますが、歯科手術との関連性については触れられていません。
当院の方針
上記の通り、「歯科処置を受けた・歯が抜けた」としても、舌下免疫療法でアナフィラキシーを起こしたという報告はありません。
しかし、理論的なリスクにはなりえますので、当院では「出血を伴う歯科処置を受けた・歯が抜けた」場合は「その当日と翌日は舌下免疫療法を中断する」と指導しています。
通常の抜歯では48時間以内に止血され、止血されればアナフィラキシーの理論的リスクは低下すると考えられるためです。
なお、出血を伴わない歯科処置であった場合は、理論的リスクは増加しないと考え、舌下免疫療法は継続してよいこととしています。
当院で舌下免疫療法を受けている患者さまで「出血を伴う歯科処置を受けた・歯が抜けた」場合、その日とその翌日は舌下免疫療法を中断し、翌々日から治療を再開してください。