アトピー性皮膚炎のかゆみ
アトピー性皮膚炎は「生命の危機」という病気では通常ありません。
しかし、そのかゆみは日常生活に強い悪影響があります。
たとえば、アトピー性皮膚炎の痒みは、子どもの睡眠を妨げるという研究があります。
Atopic dermatitis appeared to be associated with impaired sleep quality throughout childhood; thus, it is suggested that clinicians should consider sleep quality among all children with AD, especially those with comorbid asthma or allergic rhinitis and severe disease, and that interventions to impro …
子どもは睡眠中に体や脳を発達させます。
睡眠を妨げられた子どもの発育は、おのずと低下します。
重症のアトピー性皮膚炎があると、学力が低下するという論文もあります。
AD, in particular when severe, is associated with lower school performance in childhood and IQ in young men, which can interfere with academic achievements in life. Optimization of treatment of children with AD and specific educational support to children with severe AD could be needed.
そして、このかゆみは「アトピー性皮膚炎の悪化させる因子」でもあります。
アトピー性皮膚炎は、搔くことで皮膚が傷つき、傷ついたところに炎症性のサイトカインが集まり、これが皮膚をかゆくさせる、という構図を持ちます。これを「イッチ・スクラッチ・サイクル(かゆみと掻破の悪循環」と言います。
アトピー性皮膚炎のかゆみは、子どもの成長を妨げる危険性があります。
そして、アトピー性皮膚炎のかゆみは、アトピー性皮膚炎をさらに悪化させていくのです。
アトピー性皮膚炎の治療
アトピー性皮膚炎のかゆみをなんとか改善させる。
これこそが、アトピー性皮膚炎の治療になります。
かゆくなくなれば、搔かなくなります。
掻かなくなれば皮膚は傷つかず、健常な皮膚に成長する可能性があります。
アトピー性皮膚炎のかゆみを取る治療で、もっとも重要なのは「外用治療」です。
すなわち、お薬を塗る治療です。
お薬を塗るというのは意外と大変です。
決められた分量を決められた場所に毎日毎日塗っていくには高い治療意欲が必要です。
この外用治療がしっかりできれば、多くの人のアトピー性皮膚炎は良くなります。
しかし、一部には「どれだけしっかりお薬を塗っても、アトピー性皮膚炎のかゆみが取れない」という人がいます。
こういう人には、追加の治療が必要です。
追加の治療として、次に紹介する「中波紫外線療法」があります。
中波紫外線療法とガイドライン上の位置づけ
ここで紹介するのが「中波紫外線療法」です。
アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021には、以下のように位置づけられています。
紫外線療法は、抗炎症外用薬や抗ヒスタミン薬、保湿外用薬などによる治療で軽快しない例やコントロールできない例、従来の治療で副作用を生じている例に考慮される治療法に位置づけられる。
紫外線には皮膚の免疫に関係する細胞の働きを抑制する作用があり,アトピー性皮膚炎の皮疹を軽快させる効果が期待できる。
アトピー性皮膚炎に対する紫外線療法として,波長340~400 nmのUVA1と波長311 nmをピークとするナローバンドUVBの有用性が数多く報告されており、本邦ではナローバンドUVBがより広く用いられている。
難治性のアトピー性皮膚炎の治療に光線療法はすすめられるか
推奨文:外用やスキンケア、悪化因子対策で軽快しない例や、従来の治療で副作用を生じている中等症から重症のアトピー性皮膚炎には、光線療法を行ってもよい。
推奨度:2、エビデンスレベルB
当院では、エキシマライトという「中波紫外線療法」を受けることができます。
エキシマライトは、波長311 nmをピークとするナローバンドUVBです。
エキシマライトの副作用と効果と費用
エキシマライトは、照射後数時間で、日焼けのような赤みが出現することがあります。
赤みは、通常2-3日で消失します。
赤みが消えた後、皮膚が黒っぽくなることがありますが、これは日焼けと同じで数か月で消えます。
皮膚が日光に弱い方や、前回の照射で赤みが3日以上続いた方は、照射を弱くします。
赤みがあまり出ず、かゆみがなかなか取れない場合は、照射を強くします。
1回の照射で、半数以上の人でアトピー性皮膚炎のかゆみが軽減します。
照射は、中2日以上を空けて、繰り返し受けることができます。
アトピー性皮膚炎のかゆみがつらいと感じたときに、すぐにエキシマライトを受けられることが理想的です。
そのため、当院ではエキシマライト専用の予約枠を設けています。
費用は1回3400円です。
保険診療ですので、受給者証をお持ちの人は負担金なしで治療を受けられます。
3割負担の人では1020円を負担します。
まずはアレルギー外来で相談を
エキシマライトは、すべての人が受けられる治療ではありません。
アトピー性皮膚炎診療ガイドラインにある通り、「外用治療だけでは寛解維持できない中等症から重症のアトピー性皮膚炎」に適応があります。
また、エキシマライトだけでアトピー性皮膚炎が寛解維持できるわけではありません。
「エキシマライトによってかゆみを抑えている間に、外用薬で炎症を鎮める」というイメージをお持ちください。
まずは、当院のアレルギー外来でご相談ください。